レディに運ばすつもりかしら?

透&フラン「それは?」

咲夜「この、泥棒ネズミがお嬢様のお部屋を壊したのです。」

その声と共に咲夜が現れた。……左手には箒を持ち、右手には魔理沙を抱えながら。

透(何か、面白い構図だな。)

フラン「魔理沙、やられちゃたの?」

咲夜「いえ……やられたと申されますより、自滅です。」

フラン「自滅?」

透「再現VTRどうぞ、だぜ。」








――透とフランが遊んでる(?)頃――

魔理沙「そんな、弾幕じゃ、私には当たらないぜ!?」

魔理沙は、廊下を上下や左右に、はたまた急上昇や急降下などアクロバットな動きをしながら咲夜の弾幕を避けていた。

咲夜「く、ちょこまかと!!」

咲夜(紅魔館の中だから、壊さないように加減をしているのに!)

魔理沙(今日の咲夜は、体調が悪いのか?……だったら、)

魔理沙は、猛スピードで廊下の角を曲がり、180度回転した。

咲夜「待ちなさい!……!?」

追うと、スペルカードを持ってる魔理沙がいた。

魔理沙「決めるぜ! スペルカード……マスター…」

咲夜(あれは……マスタースパーク!? まずいっ!)

咲夜「時間よ!」
魔理沙「スパーク!!」



魔理沙の手のひらから、太い一本のレーザーが発射された。

魔理沙「…やったか?」

咲夜「残念だけど、外れよ。」

魔理沙(ギリギリで能力で避けたな…)

魔理沙の考えは当たっていた。咲夜は、時間を操る事が出来る。マスタースパーク発射の時間を止めれば簡単に避ける事が出来る。

二人がにらみ合いをしていると、第三の声が現れた。

?「あなた達、一体なんてことをしてくれたの!?」

そこには、紅魔館の主、レミリアが立っていた。……服は、少し破れ、帽子もなく、震えながら。

咲夜「お、お嬢様!? 一体何が?」

レミリア「何が?ですって? 咲夜、この紅魔館のメイド長なのにそんな事も分からないの?」

咲夜「そ、それは……」

咲夜は、うつむいてしまった。
レミリア「分からないのね? だったら、教えてあげるわ。」

レミリアによると、自室で休んでいたら、いきなりレーザーが来たらしい。

魔理沙は、自分のマスタースパークの先を目で追った。
確かに、マスタースパークの先には、粉々に壊れて、空が見える部屋があった。

レミリア「咲夜が情けないせいで、魔理沙が暴れるせいで……」



レミリアは体をさらにプルプルし始めた。

魔理沙「さ、咲夜? 何かレミリアの周りが……」

咲夜「えぇ。お嬢様の周りの空気が唸っているわ。」

レミリア「ティータイムが台無しじゃない!!!!」

レミリアは、怒鳴ると何か紅い物を投げた。

魔理沙&咲夜(……グンニグル!?)

廊下いっぱいの紅い槍が飛んできた。

咲夜「くっ、時よ!」

そう言うと、咲夜の姿は消えた。

魔理沙「ず、ズルいぞ自分だけっ!……畜生!!」

魔理沙も槍と廊下の隙間に逃げこんだ。

魔理沙「危なかったぜ。……いっ!?」

ふぅ。と息を漏らした魔理沙にグンニグルの通過でダメージを負った天井の欠片が落下し、命中した。

レミリア「咲夜。魔理沙を運びなさい。…私は、もう一ヵ所の弾幕を止めに行くから。」

咲夜「かしこまりました。お嬢様。」

咲夜が、お辞儀をするとレミリアは飛んでいった。

咲夜(……何か、魔理沙に悪い事をした気分だわ。)





透「以上。再現VTRでした。」

透(何か、怒る理由が子供っぽいな。雰囲気は、大人な感じなのに……)

フラン「でも、お姉様の服は綺麗だよ?」



レミリア「お客様がいるのに、はしたない格好で出る訳にもいかないから、引き返して咲夜に作ってもらったの。」

透(咲夜……スゲェー!!)

フラン「そうだったんだ。……お姉様。」

レミリア「何かしら?フラン。」

フラン「私、もう少しだけ、トオルと遊びたい。」

レミリア「え?」
透「なに?」

フラン「だめ?」

レミリア「……仕方ないわね。でも……咲夜。」

咲夜「かしこまりました。」

咲夜の姿が消えた。

レミリア「遊ぶのは、昼食を食べてからにしましょ?」

フランは嬉しいそうに、頷いた。

レミリア「トオル。申し訳ないけど、魔理沙を運んでくれないかしら?」

透「俺が?」

レミリア「レディに運ばすつもりかしら?」

レミリアは、口元に笑みを作りながら言った。

透「分かったよ。」

俺は、寝かされている魔理沙を背負い、箒を回した手で持った。 そして、前を歩く吸血鬼の姉妹の後を追った。